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選別色強まるシンガポールの外国人労働者受入策|日本総研

发布时间:2023-08-28 08:29:42 点击量:
アジア?マンスリー 2021年4月号

2021年03月26日 岩崎薫里


シンガポールでは、新型コロナ禍を契機に自国民の雇用を優先し、外国人労働者の受け入れを全体的に厳格化。一方で、将来の経済発展に資する人材に関しては、厳選のうえ引き続き積極的に受け入れている。

■幅広い技能の外国人労働者を活用しながら経済発展
シンガポールは外国人労働者を積極的に受け入れながら経済発展してきた。今では雇用者全体に占める外国人の割合は4割近くにのぼり、製造業で5割、建設業で7割強、家事労働(メイド)に至っては10割を占める。全人口569万人のうち外国人の割合も38%(216万人)と、世界的にみて高水準にある(2020年9月時点)。なお、外国人のうち永住権保持者は人口の9%(52万人)、永住権非保持者は29%(164万人)である。

シンガポールが金融や物流をはじめさまざまな分野におけるアジアのハブとしての地位を確立し、世界トップクラスの経済的豊かさを実現できたのは、一つには低技能から高技能まで幅広い層の外国人労働者を受け入れ活用してきたためである。具体的には、外国人向け就労許可証として低技能労働では労働許可証、中技能労働ではSパス、高技能労働では主に雇用許可証を用意したうえで、就労許可証別に異なる管理体制を敷き、その時々の必要性に応じてそれぞれの数や中身を調整してきた。

■外国人労働者の受け入れを段階的に厳格化
シンガポール国民の間では、外国人労働者が自国経済に大きく貢献していることを認識しつつも、彼らへの依存が高まるにつれて次第に警戒感が広がっていった。それは主に高技能および中技能の外国人労働者に向けられている。高技能労働の分野では、世界中から集まる外国人に好条件の雇用が独占されている、また、中技能労働の分野では、コストが安価な外国人の雇用が優先されている、といった警戒感である。なお、低技能労働者が雇用面から警戒の対象となっていないのは、低技能労働への就労を希望する国民が少ないためであり、国民の所得水準の高さを反映している。この点は、低賃金の移民に職を奪われるとして排斥の動きが一部でみられる欧州諸国とは事情が異なる。

こうしたなか、政府は2010年代入り以降、外国人労働者の受け入れに関して、それまでの積極姿勢を徐々に後退させていった。国民感情への配慮に加えて、外国人労働者への過度の依存が、企業の生産性向上に向けた投資意欲を削ぎ、持続的な経済発展にマイナス影響を及ぼしかねないとの懸念による。

政府が行ってきたのは、外国人労働者の雇用コストの引き上げと国民の雇用機会の拡大である。具体的には、労働許可証?Sパス保持者(低?中技能)の雇用主に課している外国人雇用税の引き上げおよび雇用上限率(全雇用者に占める外国人労働者の上限比率)の引き下げ、Sパス?雇用許可証保持者(中?高技能)に求められる最低月収の引き上げ、などが段階的に実施されてきた。また、2014年には、企業が雇用許可証保持者(高技能)を雇用する前に、政府が運営する国民(永住権保持者を含む)向け求人情報ウェブサイトで求人広告を一定期間掲載することが義務化された。永住権の取得要件も大幅に厳格化された。それらの結果、1990年代、2000年代にはそれぞれ年平均6.2万人、8.0万人のハイペースで増加していた外国人の数(永住権保持者と非保持者の合計)は2010年代には同3.6万人へ大幅に減速した。

昨年の新型コロナの拡大はシンガポール経済に大きな打撃を及ぼし、雇用環境の悪化に伴い外国人労働者に対する国民の風当たりは一段と強まった。それを受けて政府も、Sパス?雇用許可証保持者(中?高技能)の最低月収要件を一段と引き上げる、事前に求人広告を掲載する義務をSパス保持者(中技能)の雇用時にも拡大するなど、自国民の雇用を優先する姿勢を一層強めている。

■必要な人材は厳選のうえ積極的に受け入れ
シンガポール政府はその一方で、本年1月に外国人向けの新たな就労許可証としてテックパス(Tech.Pass)を導入した(右表)。情報技術分野での競争力の強化と世界的なテクノロジー?ハブとしての地位の確立を目指す一環として、テクノロジー関連の高技能労働者を誘致することが目的であり、導入に当たり500名の受入枠を設定した。自国民で賄いきれない人材領域については、厳選したうえで引き続き海外から積極的に受け入れる姿勢に変化はないことが確認できる。政府は外国人労働者の受け入れにおいて、将来の経済発展に真に必要と判断される人材のみに絞る、いわば量よりも質の重視に動いているといえる。

もっともこれは、一歩間違うと「外国人の受け入れに消極的」というメッセージと受け取られかねず、そうなると必要な人材の確保にも支障を来す懸念がある。また、外国人の雇用コストの引き上げが自国民のスキル向上を伴わなければ、企業は優秀な人材を雇用することが難しくなり経営に悪影響が及ぶ恐れがある。これまで外国人労働者の受け入れを経済発展に生かしてきたシンガポールも、今後は難しいかじ取りを強いられることになろう。

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